はじめに
「お酢は、掃除の際の洗浄液や洗濯物の柔軟剤としても使用できる」という話を聞いたことは、ありませんか。
そして、「その際には、どの種類のお酢を使用するのが良いのか」と、疑問に思ったことは、ありませんか。
この記事では特に、ドイツで19世紀後半より、料理にも、また掃除や洗浄の際の洗浄液、あるいは洗濯物の柔軟剤としても使用されている「オール・イン・ワン」のお酢「Surig/ズーリック」について説明します。
また、これ以外のお酢を洗浄液・洗浄剤や洗濯物の柔軟剤として使用する際の目安についても説明します。
木炭から蒸留されたビネガーエッセンス
この記事で紹介するお酢「Surig/ズーリック」は、ドイツ語で「Essigessenz(エーシッヒエッセンツ)」、英語で「Vineger Essence(ビネガーエッセンス)」と呼ばれ、日本語では、「ビネガーエッセンス」や「酢エッセンス」などと呼ばれるお酢です。
ただし、このお酢は、「炭化した木材」から蒸留された「ビネガーエッセンス」と呼ばれるお酢の極一部のお酢になります。
ご家庭で料理に使用するお酢の中では、特にこの種類のお酢を洗浄液や柔軟剤として使用することをお勧めします。
ちなみに、「Surig(ズーリック)」(上の画像左側)は、2020年10月現在において、日本でも入手可能です。
しかし、この種類のお酢以外を洗浄液や柔軟剤として用いる際の判断の目安も、下方で記します。
このお酢の歴史について
木炭から蒸留されたお酢「Surig(ズーリック)」を製造している「Speyer & Grund GmbH & Co. KG(シュパイア・ウント・グルント)」社は、1863年にドイツのフランクフルト・アム・マインで、染色工場や繊維工場に天然染料を供給する会社として設立されました。
しかし、化学産業の発展が進むにつれて、新たに安価な合成染料が市場に参加したことにより、業績が悪化。
新たなビジネスモデルを試行錯誤する最中、フランクフルト近郊のマインツにて、世界で初めて、炭化した木材から、料理にも使用できるほど純粋な酢酸を、蒸留することに成功しました。
そして、1877年にこの極めて純粋なお酢を製造・販売するに至ります。
19世紀後半以来、ドイツの家庭でこのお酢は、何世代もの間、料理用としても、また洗浄液としても使用されています。
このお酢の特性について
この木炭から蒸留されたお酢は、通常のお酢の酸度の平均値が5%であるところ、その5倍の酸度25%になります。
そのため、料理、特にサラダなどに使用する場合には、お酢1に対し水4の比率で薄める必要があります。そうすると、平均的なお酢の酸度5%になります。
しかし、このお酢は、酸度が高いこと以外に、非常に純度の高いお酢です。
つまり、その他の原料から生産されたお酢に比べると、「酸味」のみが強く、ただ「酸っぱい」だけのお酢なのです。
本当に、ただ「酸っぱい」以外は、「甘味」も「旨味」も「味の深み」、言い換えれば「コク」も一切ありません。
とにかく、単に強烈な「酸味」があるだけの「お酢」なのです。
しかし、正にこのことが洗浄液として極めて適している理由になります。
次節では、「100 ml あたりの各お酢の成分比較表」を記します。
100 ml あたりの各お酢の成分比較
お酢の 種類 | 色 | 酸度 | エネ ルギー | 脂質 – 飽和 脂肪酸 | 炭水 化物 – 糖質 | 食物 繊維 | たんぱく 質 | 塩分 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
Surig (ズー リック) | 無色 透明色 | 25% | 65 kj / 15 kcal | <0.1 g – <0.1 g | <0.1 g – <0.1 g | — | <0.1 g | <0.03 g |
Würzgut (ビュルツ グート) | 無色 透明色 | 25% | 65kj / 15kcal | <0.1 g – <0.1 g | <0.1 g – <0.1 g | — | <0.1 g | <0.03 g |
A社製 玄米酢 | 透明 薄茶色 | — | 79 kj / 18 kcal | <0.5 g – <0.1g | <0.5 g – 0.5 g | — | <0.7 g | 0.02 g |
M社製 穀物酢 | 透明 黄金色 | 4.2% | 112 kj / 26 kcal | <0.5 g – <0.1g | 6.4 g – 1.2 g | — | <0.5 g | <0.01 g |
D社製 有機栽培 リンゴ酢 | 紅茶色 | 5% | 75 kj / 18 kcal | 0.1 g – 0 g | 0.5 g – 0.4 g | <0.5 g | <0.1 g | <0.01 g |
A社製 梅酢 | 紅茶色 | — | 78 kj / 19 kcal | <0.5 g – <0.1g | 3.8 g – 0.9 g | — | <0.5 g | 18.8 g |
D社製 バルザ ミコ酢 (赤) | 醤油色 | 6 % | 487 kj / 114 kcal | 0 g – 0 g | 23 g – 22 g | — | 0.5 g | 0.02 g |
上表の色分けについて説明します。この色分けは、科学的な分類ではなく、あくまでも視覚的に一瞬で各項目の値をおおよそ見分けるためのものです。
酸度以外の数値に関して、最上段の「Surig/ズーリック」を基準とし、
- その数値以内に収まっている項目を「緑色」
- その数値の5倍以内に収まっている項目を「黄色」
- その数値の5倍を超過している項目を「赤色」
で色分けしています。
また、「色」の項目では、水のような「無色透明色」以外である色のお酢の名称とその色は、「赤色」で色分けしています。
この表で一目瞭然なのは、木炭から蒸留されたお酢「Surig/ズーリック」の酸度が25%と高いこと以外、その他の数値がいかに低く、純粋なお酢であるか、ということです。
ちなみに、2番目に挙げられているお酢「Würzgut/ビュルツグート」も「Surig(ズーリック)」を製造している「Speyer & Grund GmbH & Co. KG(シュパイア・ウント・グルント)」社の製品になります。
お酢を掃除の洗浄液や洗濯物の柔軟剤に使用する際の目安について
料理用に使用できるお酢の中で、もし「Surig(ズーリック)」や「Würzgut/ビュルツグート」、またはこれらのお酢に準じるお酢以外のお酢を使用する場合は、次を目安としてください。
- 必ず水のような「無色透明色」のお酢を使用すること
- 上表「100 ml あたりの各お酢の成分比較」を参考とし、各成分が緑色に収まるお酢を使用すること
- 特に「緑色」でない成分があるお酢を使用する場合は、必ず製造業者や販売業者に問い合わせて確認すること
まとめ
料理にも使用できるお酢を、掃除の際の洗浄液や洗濯物の柔軟剤として使用する場合は、この記事で紹介している「Surig/ズーリック」や「Würzgut/ビュルツグート」、ないし成分的にこれらのお酢に準じるお酢をお勧めします。
その理由は、
- ドイツで19世紀後半より何世代にも渡って、料理にも、また掃除の際の洗浄液としても使用されている「オール・イン・ワン」のお酢であるということ
- この「木炭から蒸留された」酸度25%のお酢の酸度以外の各成分が、極めて低い数値であり、純度の高いお酢であるということ
になります。
これら以外のお酢を使用する場合は、この記事の「100 ml あたりの各お酢の成分比較」と「お酢を掃除の洗浄液や洗濯物の柔軟剤に使用する際の目安について」の節をご参考ください。
また、これら以外のお酢を使用する場合は、製造業者・販売業者にお問い合わせください。